第3章 商品設計と価格設計を整える

営業活動において、多くの人が見落としがちなのが商品設計と価格設計の重要性です。どれだけ優れたスキルを持っていても、それをどのような形で提供するのか、いくらで提供するのかが曖昧では、相手は購入を決断できません。特に副業やフリーランスとして活動する場合、相手は「この人に頼んで大丈夫だろうか」という不安を抱えています。この不安を減らし、安心して依頼できる仕組みを作ることが、商品設計と価格設計の役割です。

この章では、単発プラン、初回お試しプラン、継続プランなど、相手の状況に応じた選択肢を用意する方法を解説します。また、成果物の範囲、納期、修正回数、連絡手段を明確にすることで、後々のトラブルを防ぎます。価格については、作業時間だけで決めるのではなく、提供する価値や信頼性の観点から組み立てる考え方を示します。これにより、値下げ交渉にも動じない土台を作ることができます。

目次

なぜ商品設計が重要なのか

商品設計とは、自分が提供するサービスを具体的なパッケージとして整理することです。多くの人は「依頼があったら対応する」というスタンスで活動していますが、これでは相手にとって何を頼めるのかがわかりにくく、依頼のハードルが高くなります。

たとえば、ウェブデザインのスキルを持っている人が「デザインならなんでもやります」と言っても、相手は何をどう頼めばいいのかわかりません。一方で、「トップページのデザインと制作をワンセットで提供します。納期は二週間、修正は三回まで対応可能です」と明確に示せば、相手は自分が何を得られるのか、どれくらいの期間がかかるのかを具体的にイメージできます。

商品設計がしっかりしていると、相手の不安が減ります。不安が減れば、購入の決断がしやすくなります。また、商品設計が明確であれば、自分自身も見積もりや納品の管理がしやすくなり、業務の効率が上がります。

さらに、商品設計は差別化の手段にもなります。同じスキルを持つ人が複数いても、提供の仕方や組み合わせによって、まったく異なる価値を生み出すことができます。たとえば、記事執筆のスキルを持つ人でも、「一本単位で納品する」という設計と、「毎月四本の記事を継続的に納品し、SEO分析も含める」という設計では、ターゲットも価格も大きく変わります。

単発プランと継続プランの使い分け

商品設計の基本は、単発プランと継続プランを用意することです。それぞれに適した相手と状況があり、両方を用意することで、幅広いニーズに対応できます。

単発プランは、一度きりの依頼に対応するものです。たとえば、「ロゴデザイン一点」「イベント当日の撮影」「一本の記事執筆」といった形です。単発プランの利点は、相手にとって初期投資が少なく、気軽に依頼できることです。初めての取引では、相手はあなたのスキルや仕事の進め方を確かめたいと思っています。単発プランは、そのための試金石として機能します。

ただし、単発プランだけでは、収入が安定しにくいという課題があります。毎回新しい顧客を開拓する必要があり、営業にかかる時間とエネルギーが大きくなります。また、単発の案件は価格競争になりやすく、利益率が低くなる傾向があります。

継続プランは、一定期間にわたってサービスを提供するものです。「月額でSNS運用を代行」「半年間のコンサルティング契約」「毎月二本の記事を納品」といった形です。継続プランの利点は、収入が予測しやすく、安定することです。また、長期的に関わることで相手の状況を深く理解し、より質の高い成果を出せるようになります。相手にとっても、継続的にサポートを受けられる安心感があります。

継続プランを設計する際には、契約期間、納品頻度、サポート内容を明確にします。たとえば、「三か月契約で、毎月四本の記事を納品。月一回のオンラインミーティングで方向性を確認。メールでの質問は無制限に対応」といった具合です。また、契約の更新や解約の条件も事前に決めておくことで、後々のトラブルを防げます。

理想的には、単発プランで関係を始め、相手が満足すれば継続プランに移行するという流れを作ることです。これにより、初期のハードルを下げつつ、長期的な収入の安定を実現できます。

初回お試しプランの威力

単発プランと継続プランの間に、初回お試しプランを設けることも効果的です。これは、通常よりも低価格または簡易版のサービスを提供し、相手にあなたのスキルや仕事の進め方を体験してもらうためのものです。

初回お試しプランの目的は、相手の不安を下げ、購入のハードルを低くすることです。特に高額なサービスや長期契約を前提とするサービスの場合、相手は「本当に期待通りの成果が得られるのか」「この人とうまくやっていけるのか」という不安を抱えています。お試しプランを通じて、その不安を解消できれば、本契約につながる可能性が高まります。

たとえば、コンサルティングサービスを提供する場合、「初回一時間の無料相談」や「一か月間の簡易コンサルティングを通常価格の半額で提供」といったお試しプランが考えられます。ウェブサイト制作であれば、「トップページのみを制作し、気に入ればその後全ページの制作に移行」という段階的なアプローチも可能です。

ただし、お試しプランを設ける際には注意点もあります。一つは、あまりに安価にしすぎると、自分の価値を下げてしまうことです。お試しプランはあくまで入り口であり、その後の本契約で適正な価格を得ることが前提です。もう一つは、お試しプランばかりで本契約に至らない場合、労力に見合わない状況になることです。お試しプランの成果をしっかりと示し、本契約への移行率を高める工夫が必要です。

成果物の範囲を明確にする

商品設計において最も重要なのは、成果物の範囲を明確にすることです。範囲が曖昧だと、相手は「これも含まれるはずだ」と期待し、あなたは「それは範囲外だ」と考え、トラブルになります。

成果物の範囲を明確にするには、何が含まれ、何が含まれないのかを具体的に示します。たとえば、記事執筆のサービスであれば、「文字数は三千字から四千字」「画像は三点まで提供」「SEOキーワードの選定は含まない」といった具合です。ウェブサイト制作であれば、「トップページと下層ページ五ページまで」「スマホ対応は含む」「サーバーの設定は含まない」といった形です。

また、修正対応の範囲も明確にします。「修正は三回まで無料、それ以降は一回につき追加料金」といった条件を事前に伝えることで、無限に修正依頼が来る事態を防げます。ただし、修正の範囲を狭くしすぎると、相手は不満を感じるため、バランスが重要です。

成果物の範囲を明確にするもう一つの方法は、納品物のサンプルやイメージを見せることです。過去の実績や、類似案件の成果物を提示することで、相手は「このようなものが納品される」と具体的に理解できます。これにより、期待値のズレを防げます。

納期と進行管理の設定

納期も商品設計の重要な要素です。納期が曖昧だと、相手は「いつまでに仕上がるのか」が不安になり、あなた自身もスケジュール管理が難しくなります。

納期を設定する際には、現実的な期間を見積もることが大切です。無理な短納期を約束してしまうと、品質が下がったり、自分が疲弊したりします。逆に、納期が長すぎると、相手は他の選択肢を検討してしまう可能性があります。適切な納期は、作業に必要な時間だけでなく、修正やフィードバックの時間、予期せぬトラブルに対応する余裕も含めて考えます。

また、進行管理の方法も明確にします。大きなプロジェクトであれば、途中で進捗を共有するタイミングを設けます。たとえば、「初回打ち合わせ後一週間で初稿を提出し、フィードバックを受けてから二週間で最終納品」といった段階を示すことで、相手は安心できます。

進行管理では、連絡手段も重要です。メール、チャットツール、オンラインミーティングなど、どの手段でどのタイミングでやり取りをするのかを決めておきます。相手によっては、頻繁なやり取りを好む人もいれば、最小限の連絡を好む人もいます。事前に確認し、相手に合わせた方法を選ぶことで、スムーズなコミュニケーションが実現します。

価格設計の基本的な考え方

価格設計は、多くの人が最も悩むポイントです。価格が高すぎれば受注できず、安すぎれば自分が疲弊します。適正な価格を設定するには、いくつかの視点が必要です。

まず、コストベースの価格設定があります。これは、自分がかけた時間や経費をもとに価格を決める方法です。たとえば、一つの案件に二十時間かかり、自分の時給を三千円と設定すれば、最低でも六万円が必要になります。これに経費や利益を上乗せして価格を決めます。

しかし、コストベースだけで価格を決めると、作業時間が長くなるほど価格が上がるため、効率化のインセンティブが働きません。また、提供する価値が大きくても、作業時間が短ければ安くなってしまうという問題もあります。

そこで重要なのが、バリューベースの価格設定です。これは、相手にとっての価値をもとに価格を決める方法です。たとえば、あなたのサービスによって相手の売上が月に十万円増えるなら、そのサービスに五万円を支払うことは相手にとって合理的です。バリューベースで考えることで、自分の提供する価値に見合った価格を設定できます。

さらに、市場価格も参考にします。同じようなサービスを提供している他の人がどれくらいの価格で提供しているのかを調べ、自分の経験やスキルレベルと照らし合わせます。ただし、市場価格に単純に合わせるのではなく、自分の独自性や付加価値を考慮して調整します。

価値で価格を説明する

価格を提示する際、単に金額を伝えるだけでは相手は納得しません。なぜその価格なのかを説明することが重要です。そして、その説明は価値に基づいて行います。

たとえば、「このサービスは五万円です」ではなく、「このサービスを利用することで、月に二十時間の業務時間を削減でき、その時間を売上向上のための活動に充てられます。五万円の投資で、月に十万円以上の価値を生み出せる可能性があります」と説明します。

価値を説明する際には、成果、時間短縮、リスク低減の三つの観点が有効です。成果とは、相手が得られる具体的な結果です。売上増加、問い合わせ数の増加、業務効率の向上などです。時間短縮とは、相手が節約できる時間です。自分でやれば十時間かかる作業を代行することで、相手はその時間を別のことに使えます。リスク低減とは、失敗や問題を避けられることです。専門家に任せることで、初心者が陥りやすいミスを防げます。

これらの価値を具体的な数字や事例で示すことで、相手は価格の妥当性を理解しやすくなります。

信頼性で価格を支える

価格は価値だけでなく、信頼性によっても支えられます。信頼性とは、あなたが約束したことを確実に実行できるという安心感です。信頼性が高ければ、相手は多少高い価格でも納得します。

信頼性を示す要素はいくつかあります。一つは再現性です。過去の実績や事例を示すことで、「この人に頼めば、同じような成果が得られる」と相手は考えます。ポートフォリオ、お客様の声、具体的な数字などが再現性を示す材料になります。

もう一つは進行管理の能力です。納期を守る、途中経過を報告する、問題が起きたときに迅速に対応するといった姿勢が、信頼性を高めます。初回の打ち合わせで進行管理の方法を丁寧に説明することで、相手は「この人なら安心して任せられる」と感じます。

さらに、品質担保の仕組みも信頼性を高めます。たとえば、「納品後一か月間は無償でサポートします」「万が一期待に沿わない場合は全額返金します」といった保証を提供することで、相手はリスクを感じずに購入できます。

値下げ交渉に強くなる

価格を提示すると、値下げを依頼されることがあります。値下げ交渉に対して、多くの人は「断ると仕事を失うのではないか」と不安になり、簡単に値下げに応じてしまいます。しかし、安易な値下げは自分の価値を下げ、長期的には持続可能なビジネスを築けなくなります。

値下げ交渉に強くなるには、まず自分の価格に自信を持つことです。そのためには、先ほど説明した価値と信頼性の観点で価格を組み立て、その根拠を明確に説明できるようにします。価格が適正であると自分自身が確信していれば、値下げを求められても動じません。

値下げを依頼されたときの対応方法はいくつかあります。一つは、価格の根拠を改めて説明することです。「この価格には、〇〇と〇〇のサービスが含まれており、相場と比較しても適正です」と伝えます。それでも値下げを求められる場合は、提供内容を調整することを提案します。「ご予算に合わせるために、修正回数を三回から二回に減らすことは可能です」といった具合です。

また、値下げではなく支払い条件を柔軟にすることも一つの方法です。「一括払いが難しい場合は、分割払いに対応できます」といった提案をすることで、相手の負担を軽減しつつ、価格は維持できます。

値下げ交渉を完全に断ることが難しい場合もあります。しかし、その場合でも、簡単に値下げに応じるのではなく、相手にとっても自分にとってもフェアな条件を模索する姿勢が重要です。

パッケージ化で選択肢を増やす

商品設計のもう一つの工夫は、複数のパッケージを用意することです。単一のプランだけでなく、ベーシック、スタンダード、プレミアムといった段階的なプランを用意することで、相手は自分の予算やニーズに合わせて選べます。

たとえば、ウェブサイト制作であれば、「ベーシックプランはテンプレートを使用して三ページまで制作」「スタンダードプランはオリジナルデザインで五ページまで制作」「プレミアムプランはフルカスタマイズで十ページまで制作し、SEO対策も含む」といった具合です。

パッケージを複数用意することの利点は、価格帯に幅を持たせられることです。予算が限られている相手にはベーシックプランを、より充実したサービスを求める相手にはプレミアムプランを提案できます。また、多くの人は中間のプランを選ぶ傾向があるため、スタンダードプランを自分が最も提供したい内容に設定することで、理想的な受注につながります。

オプション設定で柔軟性を持たせる

パッケージだけでなく、オプションを設定することも効果的です。基本プランに加えて、追加料金でオプションサービスを提供することで、相手のニーズに細かく対応できます。

たとえば、記事執筆のサービスであれば、「基本プランは一本の記事執筆」で、「オプションとして画像選定、SNS投稿文の作成、SEOキーワード調査を追加可能」といった形です。オプションを用意することで、相手は必要なサービスだけを選べ、無駄なコストを抑えられます。

オプション設定のもう一つの利点は、単価を上げられることです。基本プランだけでは利益が少ない場合でも、オプションを追加することで全体の売上を増やせます。また、オプションを通じて相手のニーズをより深く理解し、今後のサービス改善にも活かせます。

契約書で内容を固める

商品設計と価格設計が整ったら、それを契約書として文書化することが重要です。口約束だけでは、後々「言った言わない」のトラブルになる可能性があります。

契約書には、業務内容、成果物の範囲、納期、価格、支払い条件、修正対応の範囲、キャンセルポリシー、著作権の取り扱いなどを明記します。契約書を交わすことで、双方が同じ認識を持ち、安心して仕事を進められます。

契約書は難しく考える必要はありません。インターネット上には業務委託契約書のテンプレートが多く公開されており、それを自分の業務内容に合わせてカスタマイズすれば十分です。重要なのは、曖昧な部分を残さず、具体的に記載することです。

商品設計と価格設計は進化し続ける

商品設計と価格設計は、一度作ったら終わりではありません。顧客からのフィードバック、市場の変化、自分のスキルの向上などに応じて、継続的に見直し、改善していくものです。

定期的に、現在の商品設計が相手のニーズに合っているか、価格が適正か、提供内容に無駄や不足がないかを振り返ります。また、競合の動向を観察し、自分の商品設計や価格設計がどのように位置づけられているのかを確認します。

商品設計と価格設計を磨き続けることで、あなたのサービスは常に市場に求められるものとなり、安定した受注と持続的な成長が実現します。明確な商品設計と適正な価格設計は、営業活動の土台であり、あなたのビジネスを支える最も重要な要素なのです。

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