営業がうまくいかない人の多くは、商談の場面での話し方やプレゼンテーション技術に問題があると考えます。しかし実際には、営業の成否は商談の前、つまり「誰とどこで出会うか」の段階でほぼ決まっています。適切な相手と適切な場所で出会えていれば、商談はスムーズに進みます。逆に、ターゲットではない人と出会っても、どれだけ上手に話しても受注にはつながりません。
この章では、見込み客との出会いを生み出すための導線を設計する方法を解説します。紹介、SNS、コミュニティ、マッチングサービス、既存顧客からの追加依頼など、さまざまな獲得経路を整理し、自分に合った主戦場を決めます。また、認知から相談、提案、受注に至るまでの段階を理解し、それぞれの段階で何を発信し、どう接触するかを設計します。忙しい人でも実践できる、少ない労力で回る導線の作り方も扱います。
出会いの場が営業の成否を決める
営業における「出会い」とは、単に人と知り合うことではありません。自分のサービスを必要としている人、あるいは将来必要とする可能性のある人と、適切なタイミングで接点を持つことです。この出会いの質が、その後の営業プロセス全体を左右します。
たとえば、企業向けのコンサルティングサービスを提供しているのに、主婦が集まる場所で活動しても、見込み客には出会えません。逆に、経営者が集まる勉強会に参加すれば、自然と見込み客との接点が生まれます。出会いの場を正しく選ぶことは、営業活動の効率を何倍にも高めます。
また、出会いの場によって、相手との関係性の深さも変わります。SNSで見かけた人と、知人から紹介された人では、信頼の土台がまったく異なります。信頼の土台が厚ければ、商談はスムーズに進み、受注率も高まります。したがって、どの経路で見込み客と出会うかは、戦略的に考える必要があります。
見込み客獲得の主な経路を知る
見込み客を獲得する経路はいくつかあり、それぞれに特徴があります。自分のビジネスやライフスタイルに合った経路を選び、集中的に取り組むことが重要です。
まず、紹介は最も信頼性の高い経路です。既存顧客や知人からの紹介は、すでに一定の信頼が担保されているため、商談がスムーズに進みます。紹介を増やすには、既存顧客に満足してもらうことが第一ですが、積極的に紹介を依頼することも有効です。納品後のフォローアップの際に、「もし周りに同じような課題を抱えている方がいらっしゃれば、ご紹介いただけると嬉しいです」と伝えることで、紹介の可能性が高まります。
次に、SNSは幅広い層にリーチできる経路です。特にツイッターやインスタグラム、リンクトインなどは、専門性を発信する場として適しています。SNSでの発信を通じて、自分が何者で、何を提供できるのかを継続的に伝えることで、見込み客との接点が生まれます。SNSの利点は、地理的な制約がなく、全国あるいは世界中の人とつながれることです。一方で、情報が流れやすく、継続的な発信が求められるため、労力がかかります。
コミュニティも有力な経路です。業界団体、勉強会、オンラインサロン、地域のビジネス交流会など、特定のテーマや関心を持つ人が集まる場では、共通の話題から自然に関係が深まります。コミュニティ内で価値ある情報を提供し、信頼を築くことで、仕事の依頼につながることがよくあります。
マッチングサービスやクラウドソーシングプラットフォームは、仕事を探している人と発注したい人を結びつける場です。ランサーズやココナラ、クラウドワークスなどが代表的です。これらのプラットフォームは、実績が少ない段階でも仕事を獲得しやすい一方で、価格競争が激しく、利益率が低くなりがちです。初期段階で実績を作る場として活用し、徐々に自分の顧客基盤を構築していく戦略が有効です。
既存顧客からの追加依頼やリピートも重要な経路です。一度良好な関係を築いた顧客からは、追加の依頼が来ることが多く、営業コストが最も低い経路です。既存顧客との関係を維持し、定期的にフォローアップすることで、この経路を太くできます。
自分の主戦場を決める
すべての経路に手を出すことは現実的ではありません。時間とエネルギーは限られているため、自分に合った主戦場を一つか二つに絞り、そこに集中することが成果を出す秘訣です。
主戦場を決める際には、自分の性格やライフスタイルを考慮します。たとえば、人と直接会って話すことが得意なら、コミュニティや交流会が向いています。一方で、文章を書くことが得意で、時間をかけて発信したいなら、ブログやSNSが適しています。
また、ターゲットがどこにいるかも重要です。企業の経営者をターゲットにするなら、リンクトインやビジネス系のセミナーが効果的です。クリエイターをターゲットにするなら、ツイッターやインスタグラムが適しています。ターゲットが集まる場所で活動することで、効率的に見込み客と出会えます。
主戦場を決めたら、そこでの活動を継続的に行います。一度や二度の投稿やイベント参加では成果は出ません。数か月から一年にわたって継続することで、認知が広がり、信頼が積み上がり、見込み客との接点が生まれます。
認知から受注までの段階を理解する
見込み客が最終的に受注に至るまでには、いくつかの段階があります。この段階を理解し、それぞれに適したアプローチを取ることで、見込み客を効果的に育てられます。
最初の段階は「認知」です。これは、相手があなたの存在を知る段階です。SNSでの投稿、イベントでの名刺交換、知人からの紹介など、さまざまな接点を通じて認知が生まれます。この段階では、自分が何者で、何を提供できるのかを明確に伝えることが重要です。ただし、まだ信頼関係は築けていないため、売り込みは逆効果です。
次の段階は「関心」です。認知を得た後、相手があなたのサービスや専門性に関心を持ち始める段階です。この段階では、相手にとって役立つ情報を提供し、専門性を示すことが有効です。たとえば、ブログ記事、SNSでの有益な投稿、無料のウェビナーなどを通じて、相手の課題解決に貢献します。この段階で重要なのは、相手にとっての価値を提供し、信頼を少しずつ築くことです。
さらに進むと「検討」の段階になります。相手が具体的にサービスの利用を検討し始める段階です。この段階では、相手は複数の選択肢を比較していることが多いため、自分の強みや独自性を示すことが重要です。事例や実績、お客様の声などを提示し、「この人に頼めば安心だ」と感じてもらいます。
そして「相談」の段階です。相手が具体的に相談を持ちかけてくる段階で、ここから商談が始まります。この段階では、相手の課題を丁寧にヒアリングし、適切な提案を行います。すでに認知、関心、検討の段階を経ているため、商談はスムーズに進むことが多いです。
最後が「受注」です。提案が受け入れられ、契約に至る段階です。ここまでの段階を丁寧に進めてきた場合、受注率は高くなります。
各段階で何を発信するか
認知から受注までの各段階で、発信する内容や接触の仕方を変えることが効果的です。
認知の段階では、自分の専門性やサービスの概要を簡潔に伝えます。SNSのプロフィール、名刺、自己紹介の文章などを整え、相手が「この人は何ができる人なのか」を一目で理解できるようにします。また、定期的に発信を続けることで、認知を広げます。この段階では、広く浅く届けることが目的です。
関心の段階では、相手の課題に関連する情報を提供します。ターゲットが抱えているであろう悩みや疑問に答えるブログ記事、SNSでの投稿、動画などを作ります。たとえば、「〇〇で困っている人が見落としがちな三つのポイント」といったテーマで情報を発信することで、相手は「この人は自分の状況を理解している」と感じます。この段階では、売り込まずに、純粋に役立つ情報を提供することが信頼を築きます。
検討の段階では、自分の実績や事例を示します。過去にどんな課題を解決したのか、どんな成果を出したのかを具体的に伝えます。お客様の声や推薦文も効果的です。また、初回相談の案内や、お試しプランの紹介など、次のステップに進みやすい情報を提供します。
相談の段階では、個別のやり取りが始まります。メールや電話、オンラインミーティングなどを通じて、相手の具体的な状況をヒアリングし、最適な提案を行います。この段階では、迅速かつ丁寧な対応が信頼をさらに高めます。
少ない労力で回る導線を作る
見込み客を集める活動は、継続することが重要ですが、忙しい人にとっては大きな負担になります。そこで、少ない労力で回る導線を作ることが現実的です。
一つの方法は、ストック型のコンテンツを作ることです。ストック型とは、一度作れば長期間にわたって価値を発揮するコンテンツのことです。ブログ記事、YouTubeの動画、ポッドキャストのエピソードなどが該当します。これらは、検索エンジンやプラットフォーム内の検索を通じて、継続的に新しい見込み客に届きます。一方、SNSの投稿はフロー型で、時間が経つと流れてしまうため、継続的な発信が必要です。
ストック型のコンテンツを作る際には、よくある質問や、ターゲットが検索しそうなキーワードを意識します。たとえば、「初めてフリーランスになる人が知っておくべき五つのこと」といった記事は、多くの人が検索するテーマであり、長期間にわたって読まれます。
もう一つの方法は、自動化できる部分を自動化することです。たとえば、メールマガジンを活用し、登録した人に対して段階的に情報を提供する仕組みを作ります。最初のメールでは自己紹介とサービスの概要、二通目では事例紹介、三通目では初回相談の案内といった形で、自動的に見込み客を育てます。
また、既存の発信を再利用することも効率的です。ブログ記事を書いたら、その内容をSNSで短く要約して投稿する、動画のスクリプトをブログ記事にする、といった形で、一つのコンテンツを複数の形式で展開します。
SNSでの発信の基本
SNSは見込み客を集める有力な手段ですが、効果的に活用するにはいくつかのポイントがあります。
まず、どのプラットフォームを選ぶかが重要です。ターゲットがどこにいるかを考え、そのプラットフォームに集中します。たとえば、ビジネスパーソンをターゲットにするならリンクトインやツイッター、ビジュアル重視のサービスを提供するならインスタグラムが適しています。
発信の内容は、役立つ情報、自分の考えや価値観、実績や事例、日常の一コマなど、バランスよく混ぜることが効果的です。役立つ情報だけでは人間味が伝わらず、日常の話ばかりでは専門性が伝わりません。フォロワーにとって価値があり、かつあなたの人柄が伝わる発信を心がけます。
発信の頻度も重要ですが、無理をして毎日投稿する必要はありません。週に数回でも、継続することが大切です。また、一方的に発信するだけでなく、他の人の投稿にコメントしたり、質問に答えたりすることで、関係性を築きます。
コミュニティでの活動の仕方
コミュニティは、深い信頼関係を築きやすい場所です。しかし、参加するだけでは十分ではなく、積極的に価値を提供することが重要です。
コミュニティで価値を提供する方法はいくつかあります。一つは、知識や経験を共有することです。他のメンバーの質問に答えたり、役立つ情報を提供したりすることで、専門家としての認識が広まります。もう一つは、他のメンバーを助けることです。紹介をしたり、協力を申し出たりすることで、信頼関係が深まります。
コミュニティ内では、売り込みは避けるべきです。自分のサービスを宣伝するのではなく、純粋にメンバー同士の関係を築くことに集中します。そうすることで、自然な形で仕事の依頼が生まれることが多いです。
また、コミュニティ内でのイベントやプロジェクトに積極的に参加することも有効です。勉強会の講師を務めたり、運営を手伝ったりすることで、認知度と信頼度が高まります。
紹介を増やす仕組みを作る
紹介は最も質の高い見込み客獲得経路ですが、偶然に頼るのではなく、仕組みとして設計することが可能です。
紹介を増やすための第一歩は、既存顧客に満足してもらうことです。満足度が高ければ、自然と紹介が生まれます。そのためには、期待を超える成果を提供し、丁寧なコミュニケーションを心がけます。
次に、紹介を依頼することです。多くの人は、紹介してもらえると嬉しいと思っていても、依頼することをためらいます。しかし、適切なタイミングで、「もし周りに同じような課題を抱えている方がいらっしゃれば、ご紹介いただけると嬉しいです」と伝えることは、決して失礼ではありません。
また、紹介しやすい仕組みを作ることも有効です。たとえば、紹介カードを用意したり、紹介特典を設けたりすることで、紹介のハードルを下げます。紹介特典は、金銭的なものだけでなく、「紹介してくださった方には、次回のサービスを割引します」といった形でも構いません。
既存顧客からの追加依頼を増やす
既存顧客は、見込み客獲得の最も効率的な源です。すでに信頼関係が築けているため、追加の依頼を獲得しやすく、営業コストがほとんどかかりません。
既存顧客からの追加依頼を増やすには、定期的なフォローアップが欠かせません。納品後も、数週間後、数か月後にメールや電話で近況を尋ねることで、関係が継続します。その際、「最近、こんなサービスも始めました」「こんな事例がありました」といった情報を提供することで、新たなニーズを喚起できます。
また、既存顧客に対して、新しいサービスや追加オプションを提案することも有効です。たとえば、ウェブサイトを制作した顧客に対して、「運用サポートも提供できます」と提案することで、継続的な契約につながります。
既存顧客との関係を維持するもう一つの方法は、定期的に価値を提供することです。ニュースレターを送ったり、業界の最新情報を共有したりすることで、「この人はいつも役立つ情報をくれる」という印象を与えます。
導線を見える化し、改善する
見込み客を集める導線を作ったら、それを見える化し、定期的に改善することが重要です。どの経路からどれだけの見込み客が来ているのか、どの段階で離脱しているのかを把握することで、改善点が明確になります。
たとえば、SNSからの問い合わせが少ない場合、発信内容やプロフィールの見直しが必要かもしれません。相談までは進むが受注に至らない場合、提案内容や価格設定に問題がある可能性があります。
データを記録し、定期的に振り返ることで、少しずつ導線を最適化していきます。最初から完璧な導線を作ることは難しいですが、試行錯誤を重ねることで、自分に合った、効率的な導線が出来上がります。
見込み客を集める導線は、営業活動の基盤です。この導線がしっかりしていれば、無理に売り込まなくても、自然と仕事が集まるようになります。自分の主戦場を決め、継続的に価値を提供し、関係を築くことで、持続的に見込み客を獲得できる仕組みを作り上げましょう。