営業活動において、最も大きな課題は継続することです。最初は意気込んで活動を始めても、数週間、数か月すると行動が止まってしまう人は少なくありません。営業が続かない最大の理由は、成果が出る前に行動が止まることです。そして、行動が止まる理由は、成果が見えないこと、何をすればいいのかわからなくなること、忙しくて時間が取れないことなどです。
この章では、営業活動を習慣化し、継続できる仕組みを作る方法を解説します。毎週の営業活動を「小さく回す仕組み」にすることで、無理なく続けられます。また、接点数、アプローチ数、返信数、商談数、提案数、受注数、平均単価、継続率といった最低限の数字を管理することで、どこがボトルネックなのかを判断できるようにします。さらに、忙しい人でも続けられるように、営業タスクを細分化し、曜日ごとに固定する方法も扱います。結果として、気分やモチベーションに左右されず、プロセスで案件獲得を増やせる状態を作ります。
なぜ営業は続かないのか
営業活動が続かない理由を理解することが、継続する仕組みを作る第一歩です。
一つ目の理由は、成果が見えにくいことです。営業活動は、すぐに結果が出るものではありません。アプローチをしても返信がない、商談をしても受注に至らない、といったことが続くと、「自分のやり方は間違っているのではないか」「このまま続けても無駄ではないか」と不安になります。そして、成果が出る前に諦めてしまいます。
二つ目の理由は、何をすればいいのかわからなくなることです。最初は「メールを送る」「電話をかける」といった具体的な行動を決めていても、それが習慣化されないうちに、他の業務に追われて忘れてしまいます。そして、営業活動をしなければと思いつつも、具体的に何から手をつければいいのかわからず、結局何もしない日が続きます。
三つ目の理由は、忙しくて時間が取れないことです。特に副業やスモールビジネスでは、本業や他の業務に追われ、営業活動は後回しになりがちです。そして、「時間ができたらやろう」と考えているうちに、いつまでも実行されません。
これらの理由を克服するためには、営業活動を習慣化し、数字で管理することが必要です。
営業を小さく回す仕組みを作る
営業活動を継続するためには、大きな目標を立てるのではなく、小さく回す仕組みを作ることが重要です。
小さく回すとは、毎日あるいは毎週、無理なく実行できる量の営業活動を続けることです。たとえば、「毎日三件だけメールを送る」「週に一回だけ商談を入れる」といった形です。これらは、達成が難しくない目標ですが、継続することで確実に成果につながります。
小さく回す仕組みを作る際には、具体的な行動を定義することが重要です。「営業活動をする」という曖昧な目標ではなく、「午前中に見込み客リストから三件選び、メールを送る」といった、具体的な行動に落とし込みます。具体的であれば、迷わずに実行できます。
また、行動を記録することも重要です。毎日、何件アプローチしたのか、何件返信があったのかを記録することで、自分の努力が可視化されます。これにより、「今日も何もしなかった」という罪悪感から解放され、「今週は十件アプローチした」という達成感を得られます。
営業の数字を把握する
営業活動を改善するためには、数字を把握することが不可欠です。数字を見ることで、どこがうまくいっていて、どこがボトルネックなのかが明確になります。
把握すべき最低限の数字は以下の通りです。
接点数とは、新たに出会った見込み客の数です。SNSでつながった人、イベントで名刺交換した人、紹介された人などが含まれます。接点数が少なければ、そもそも営業活動の母数が足りていません。
アプローチ数とは、実際に連絡を取った見込み客の数です。メールを送った件数、電話をかけた件数、DMを送った件数などです。アプローチ数が少なければ、積極的に行動していないことになります。
返信数とは、アプローチに対して相手から返信があった数です。返信率は、アプローチの質を示す指標です。返信率が低い場合、メールの内容やタイミングを見直す必要があります。
商談数とは、実際に相談や打ち合わせに進んだ数です。商談数が少ない場合、アプローチの段階で相手の関心を引けていないか、アプローチ数自体が足りていません。
提案数とは、具体的な提案を行った数です。商談数に対して提案数が少ない場合、ヒアリングが不十分で提案に至らないか、相手のニーズと自分のサービスが合っていない可能性があります。
受注数とは、実際に契約に至った数です。受注数が少ない場合、提案の内容や価格設定、クロージングの方法を見直す必要があります。
受注率は、提案数に対する受注数の割合です。受注率が低い場合、提案の質やクロージングの技術を改善する必要があります。
平均単価とは、一件あたりの受注金額です。平均単価が低い場合、価格設定を見直すか、より高額なサービスを提供することを検討します。
継続率とは、一度受注した顧客が再度依頼してくれる割合です。継続率が低い場合、納品後のフォローアップや顧客満足度を改善する必要があります。
これらの数字を毎週あるいは毎月記録することで、自分の営業活動の全体像が見えてきます。
ボトルネックを見つけて改善する
数字を把握したら、次はボトルネックを見つけます。ボトルネックとは、営業プロセスの中で最も成果を妨げている部分です。
たとえば、接点数は多いがアプローチ数が少ない場合、見込み客には出会えているが、積極的に連絡を取っていないことがわかります。この場合、アプローチ数を増やす行動を優先します。
アプローチ数は多いが返信数が少ない場合、メールや電話の内容、タイミング、相手の選定に問題がある可能性があります。この場合、アプローチの内容を見直します。
返信数は多いが商談数が少ない場合、返信をもらった後のフォローアップが不足しているか、商談に進むための提案が弱い可能性があります。この場合、返信後の対応を改善します。
商談数は多いが提案数が少ない場合、ヒアリングが不十分で提案に至らないか、相手のニーズと自分のサービスがミスマッチの可能性があります。この場合、ヒアリングの質を高めるか、ターゲットを見直します。
提案数は多いが受注数が少ない場合、提案の内容や価格設定、クロージングの技術に問題がある可能性があります。この場合、提案の質やクロージングの方法を改善します。
このように、数字を見ることで、どこに注力すべきかが明確になります。そして、ボトルネックを一つずつ改善していくことで、営業活動の効率が上がります。
営業タスクを細分化する
営業活動が続かない理由の一つは、「営業」という大きな塊として捉えてしまうことです。大きな塊は、取り掛かるのが面倒に感じられます。
営業タスクを細分化することで、一つひとつの作業は小さくなり、取り掛かりやすくなります。
たとえば、「メールを送る」というタスクは、さらに細分化できます。「見込み客リストから三件選ぶ」「それぞれの相手について簡単に調べる」「メールの下書きを作る」「送信する」といった具合です。このように細分化することで、「今は五分しか時間がないけど、リストから三件選ぶだけならできる」といった形で、少しずつ進められます。
細分化したタスクは、チェックリストにします。毎週、どのタスクを実行するのかをリストアップし、実行したらチェックを入れます。チェックが増えることで、達成感が得られ、継続のモチベーションになります。
曜日ごとに営業タスクを固定する
営業活動を習慣化するもう一つの方法は、曜日ごとにタスクを固定することです。
たとえば、「月曜日はリストの整理と見込み客の調査」「火曜日はメール送信」「水曜日は商談」「木曜日は提案書の作成」「金曜日はフォローアップ」といった形で、曜日ごとにやることを決めます。
曜日ごとに固定することで、毎回「今日は何をしようか」と考える必要がなくなります。月曜日になったら自動的にリストの整理を始める、というルーティンができあがります。
また、時間帯も固定することが効果的です。「毎日午前九時から十時は営業活動の時間」と決めることで、その時間が来たら自然と営業活動に取り掛かるようになります。
忙しい人でも続けられる工夫
副業やスモールビジネスでは、本業や他の業務に追われ、営業活動の時間を確保することが難しいことがあります。しかし、時間がないからといって営業活動を止めてしまうと、案件は入ってきません。
忙しい人でも続けられる工夫の一つは、隙間時間を活用することです。通勤時間、昼休み、夜寝る前の十分など、少しの時間でもできる営業タスクを用意します。たとえば、見込み客のSNSをチェックする、メールの下書きを作る、といったタスクは隙間時間でも実行できます。
もう一つの工夫は、営業活動の時間を最優先にすることです。多くの人は、他の業務が終わってから営業活動をしようと考えます。しかし、それでは結局時間が取れません。そこで、営業活動を一日の最初に行うことをルール化します。朝の一時間は営業活動に充てる、と決めることで、確実に時間を確保できます。
また、完璧を求めないことも重要です。「今日は三件メールを送る予定だったが、一件しか送れなかった」としても、ゼロではありません。一件でも送ることができれば、それは前進です。完璧を求めすぎると、できなかったときに自己嫌悪に陥り、続けることが嫌になります。小さな前進を積み重ねることを意識します。
記録をつけて可視化する
営業活動を継続するためには、記録をつけて可視化することが効果的です。
記録の方法は、簡単なもので構いません。スプレッドシートに、日付、アプローチした相手、内容、結果を記録するだけで十分です。あるいは、手帳に毎日「今日は三件メールを送った」とメモするだけでもいいです。
記録をつけることで、自分がどれだけ努力しているのかが可視化されます。また、一週間や一か月単位で振り返ることで、「先週は十件アプローチしたのに返信が二件だった。今週は五件アプローチして返信が三件だった」といった変化が見えてきます。
記録を見ることで、改善点も見つかります。たとえば、「火曜日に送るメールは返信率が高い」「月末に商談を入れると受注率が高い」といったパターンが見えてくることがあります。これらのパターンを活かすことで、営業活動の効率が上がります。
定期的に振り返る時間を作る
営業活動を継続し、改善していくためには、定期的に振り返る時間を作ることが重要です。
振り返りは、週に一回、あるいは月に一回行います。振り返りでは、以下の点を確認します。
まず、目標に対してどれだけ達成できたかを確認します。「今週は十件アプローチする予定だったが、実際には八件だった」といった形で、実績を把握します。
次に、うまくいったことと、うまくいかなかったことを整理します。「〇〇のメールは返信率が高かった」「〇〇の商談はヒアリングがうまくいった」といった成功パターンを記録します。逆に、「〇〇のアプローチは反応がなかった」「〇〇の提案は断られた」といった失敗パターンも記録します。
そして、次週あるいは次月の行動計画を立てます。「今週は返信率が低かったので、メールの件名を変えてみる」「商談数を増やすために、アプローチ数を十五件に増やす」といった形で、改善策を具体的な行動に落とし込みます。
振り返りの時間を確保することで、営業活動が場当たり的にならず、継続的に改善されていきます。
モチベーションに頼らない仕組みを作る
営業活動を継続する上で、モチベーションに頼らないことが重要です。モチベーションは波があり、高いときもあれば低いときもあります。モチベーションが高いときだけ営業活動をしていると、低いときには何もしなくなり、結果として継続できません。
モチベーションに頼らない仕組みを作るためには、営業活動を習慣化し、ルーティンにすることです。歯磨きをするときに「今日はモチベーションが低いからやめよう」とは考えません。同じように、営業活動も「毎日やるもの」としてルーティン化することで、モチベーションに関係なく実行できます。
また、行動のハードルを下げることも重要です。「今日は疲れているから、一件だけメールを送る」といった形で、最低限の行動を決めておきます。最低限の行動であれば、モチベーションが低いときでも実行できます。そして、一件送ることができれば、「もう一件送ろう」という気持ちになることもあります。
成功体験を積み重ねる
営業活動を継続するためには、成功体験を積み重ねることも重要です。成功体験があれば、「やればできる」という自信がつき、継続のモチベーションになります。
成功体験は、大きなものである必要はありません。「メールを送ったら返信があった」「商談がうまくいった」「提案が受け入れられた」といった小さな成功を一つひとつ積み重ねることが大切です。
成功体験を意識的に記録することも有効です。「今週の成功」として、うまくいったことを三つ書き出す習慣をつけることで、自分が前進していることを実感できます。
仲間を作る
営業活動を一人で続けることは、孤独で辛いものです。仲間を作ることで、継続しやすくなります。
仲間とは、同じように営業活動をしている人、あるいは同じ業界で活動している人です。定期的に情報交換をしたり、お互いの進捗を報告し合ったりすることで、刺激を受け、継続のモチベーションが高まります。
また、仲間と一緒に目標を立て、達成状況を共有することも効果的です。「今月は十件受注する」といった目標を宣言し、達成したら報告し合うことで、お互いに励まし合えます。
気分ではなくプロセスで案件を獲得する
営業活動を習慣化し、数字で管理することで、気分やモチベーションに左右されず、プロセスで案件を獲得できる状態を作ります。
プロセスで案件を獲得するとは、「今月は運が良かったから案件が取れた」ではなく、「毎週十件アプローチし、返信率三割、受注率二割で、結果として月に二件受注できた」という形で、再現性のある営業活動をすることです。
プロセスが確立されれば、成果を予測できるようになります。「来月は十五件アプローチすれば、三件受注できる見込みだ」といった形で、計画が立てやすくなります。
また、プロセスが確立されれば、改善もしやすくなります。「返信率を三割から四割に上げるために、メールの内容を改善しよう」「受注率を二割から三割に上げるために、クロージングの技術を磨こう」といった形で、具体的な改善策が見えてきます。
営業活動を習慣化し、数字で管理することは、最初は面倒に感じるかもしれません。しかし、一度仕組みを作ってしまえば、それが当たり前になります。そして、継続することで確実に成果が出るようになります。気分に左右されず、淡々とプロセスを回すことが、安定した案件獲得を実現する鍵です。