第6章 初回相談・ヒアリングで「課題の整理役」になる

アプローチが成功し、相手が「話を聞いてみたい」と反応してくれた段階で、多くの人は安心します。しかし、ここからが本当の勝負です。初回相談やヒアリングの場で、相手の信頼を得られなければ、受注にはつながりません。逆に、この場で相手に「この人に任せたい」と思ってもらえれば、その後のプロセスはスムーズに進みます。

この章では、初回相談やヒアリングで何をすべきか、どのように話を進めるべきかを具体的に解説します。重要なのは、自分のサービスを売り込むことではなく、相手の課題を整理し、判断材料を提供する「整理役」になることです。相手の目的、現状、困りごと、優先順位、体制、予算、期限を引き出し、整理して返すことで、相手は「この人は自分のことを理解してくれている」と感じます。

副業やスモールビジネスでは時間が限られるため、短時間でも成果が出る相談の進め方を型化します。また、次回までに確認すべき事項のまとめ方も含め、実践的な運用方法を示します。

目次

初回相談の目的を理解する

初回相談の目的を誤解している人は少なくありません。多くの人は、初回相談で自分のサービスを詳しく説明し、相手を説得することが目的だと考えます。しかし、これは逆効果です。相手はまだ、あなたのサービスが本当に必要なのか、あなたに任せて大丈夫なのかを判断できる段階にありません。

初回相談の真の目的は、相手の状況を深く理解し、課題を整理し、次のステップを明確にすることです。そして、その過程を通じて、「この人は信頼できる」「この人に任せれば安心だ」と感じてもらうことです。

信頼を得るための最も効果的な方法は、相手の話をよく聞き、相手が気づいていなかった論点を言語化し、判断材料を増やすことです。これにより、相手は「この人は自分のことを理解してくれている」「この人と話すと頭が整理される」と感じます。そして、この感覚こそが、受注につながる信頼の土台になります。

初回相談の基本的な流れ

初回相談は、いくつかの段階に分けて進めることで、スムーズに進行します。

まず、アイスブレイクから始めます。いきなり本題に入るのではなく、軽い雑談で緊張をほぐします。「今日はお時間をいただき、ありがとうございます」「こちらまでの道のりはスムーズでしたか」といった、相手が答えやすい質問をします。ただし、アイスブレイクは長引かせず、数分程度に留めます。

次に、相談の流れを説明します。「本日は、まず御社の現状や課題をお伺いし、どのようなお手伝いができるかを一緒に考えさせていただければと思います。最後に、次のステップについてもご提案させていただきます。こちらの進め方でよろしいでしょうか」と伝えることで、相手は安心します。

その後、ヒアリングに入ります。ここが初回相談の中心であり、最も時間をかけるべき部分です。相手の目的、現状、困りごと、優先順位、体制、予算、期限を引き出します。このとき、相手が話しやすいように、オープンクエスチョンを中心に質問します。

ヒアリングの後は、整理して返します。「お話を伺った限り、御社の課題は〇〇と〇〇で、優先順位としては〇〇が高いという理解で合っていますか」と確認することで、相手は自分の考えが整理されたと感じます。

最後に、次のステップを提案します。「このような状況であれば、まず〇〇から始めるのが効果的だと思います。具体的な提案書を作成しますので、来週もう一度お時間をいただけますでしょうか」といった形で、次の行動を明確にします。

相手の目的を引き出す

ヒアリングの最初に確認すべきは、相手の目的です。相手が何を達成したいのか、どんな状態を目指しているのかを理解しなければ、適切な提案はできません。

目的を引き出すための質問は、たとえば以下のようなものです。「今回、このプロジェクトを検討されている背景を教えていただけますか」「このプロジェクトが成功したとき、どのような状態になっていることを期待されていますか」「最終的に、どのような成果を求めていらっしゃいますか」。

相手が答えたら、さらに深掘りします。たとえば、「売上を増やしたい」という目的が出てきたら、「売上を増やすことで、どのような影響を期待されていますか」「具体的に、どれくらいの増加を目指されていますか」と尋ねます。これにより、表面的な目的の裏にある、本質的な目的が見えてきます。

また、相手の目的が曖昧な場合もあります。その場合は、こちらから選択肢を提示することも有効です。「一般的には、〇〇を目指す場合と、〇〇を目指す場合がありますが、御社の場合はどちらに近いですか」と尋ねることで、相手は自分の目的を明確にしやすくなります。

現状を把握する

目的がわかったら、次は現状を把握します。現状と目的のギャップが、解決すべき課題です。

現状を把握するための質問は、「現在、〇〇についてどのような取り組みをされていますか」「今の状態について、どのように感じていらっしゃいますか」「何か困っていることや、うまくいっていないことはありますか」といったものです。

相手が現状を説明し始めたら、具体的な数字や事実を引き出すことを意識します。たとえば、「問い合わせが少ない」という話が出たら、「現在、月にどれくらいの問い合わせがありますか」「以前はどれくらいでしたか」と尋ねることで、状況が具体的になります。

また、現状について、相手が認識していることと、実際の状況にズレがある場合もあります。このズレを見つけることも、ヒアリングの重要な役割です。たとえば、相手は「ウェブサイトの訪問者が少ない」と思っているが、実際にはアクセス数は十分で、問題は訪問者から問い合わせへの転換率にあるといったケースです。

困りごとを掘り下げる

現状がわかったら、相手が感じている困りごとを掘り下げます。困りごとは、単に「〇〇ができない」という表面的なものではなく、その背景にある本質的な課題を探ります。

困りごとを掘り下げるための質問は、「その問題によって、具体的にどのような影響が出ていますか」「なぜ、その問題が起きていると思われますか」「これまで、何か対策を試みられましたか」といったものです。

たとえば、「SNSの運用がうまくいっていない」という困りごとがあったとします。この場合、「うまくいっていないと感じるのは、どのような点ですか」と尋ねます。すると、「投稿しても反応が少ない」「何を投稿すればいいかわからない」「時間がなくて継続できない」といった、より具体的な困りごとが出てきます。

また、困りごとを掘り下げる過程で、相手が気づいていなかった問題が見えてくることもあります。たとえば、相手は「デザインが古い」ことを問題だと思っているが、実際には「ターゲットが明確でない」ことが根本的な問題である、といったケースです。このような気づきを提供することが、課題の整理役としての価値です。

優先順位を確認する

複数の課題がある場合、すべてを同時に解決することは現実的ではありません。そのため、優先順位を確認することが重要です。

優先順位を確認するための質問は、「いくつか課題が出てきましたが、その中で最も重要だと感じるのはどれですか」「すぐに取り組むべきことと、後回しでもいいことを分けるとしたら、どのように考えられますか」といったものです。

また、こちらから優先順位の基準を提示することも有効です。「一般的には、効果が大きく、すぐに実行できるものから取り組むのが効率的です。御社の場合、〇〇と〇〇はすぐに着手できそうですが、いかがでしょうか」と提案することで、相手は判断しやすくなります。

優先順位を明確にすることで、相手は次に何をすればいいのかが見えてきます。また、すべてを一度に解決しようとするプレッシャーから解放され、現実的なステップを踏めるようになります。

体制と役割分担を把握する

プロジェクトを進める際には、相手側の体制や役割分担を把握することも重要です。誰が意思決定者なのか、誰が実務を担当するのか、誰が承認するのかを理解しておくことで、スムーズに進行できます。

体制を把握するための質問は、「このプロジェクトには、どなたが関わられますか」「意思決定は、どなたが行われますか」「実際の作業は、御社側で行われますか、それとも外部に委託されますか」といったものです。

特に、意思決定者が誰なのかを把握することは重要です。初回相談の相手が意思決定者でない場合、その人を通じて意思決定者に情報を伝える必要があります。その場合、「この内容を社内で共有される際、どのような資料があると伝えやすいですか」と尋ね、資料を用意することも有効です。

また、相手側のリソースも確認します。「御社側で対応できる時間や人員はどれくらいありますか」と尋ねることで、どこまで相手に任せ、どこまで自分が担うべきかが見えてきます。

予算と期限を確認する

予算と期限は、提案を作る上で欠かせない情報です。しかし、多くの人が予算を聞くことをためらいます。予算を聞くことは失礼だと感じたり、高い金額を言われたら困ると不安になったりするからです。

しかし、予算を確認しないまま提案すると、後で「予算が合わない」という理由で断られることになります。これは、双方にとって時間の無駄です。そのため、初回相談の段階で予算を確認することが重要です。

予算を聞く際の質問は、「今回のプロジェクトに対して、どれくらいの予算を想定されていますか」「予算の範囲について、教えていただけますか」といったものです。もし相手が答えにくそうにしていたら、「一般的には、このような案件では〇〇円から〇〇円の範囲で提案することが多いのですが、御社の場合はいかがでしょうか」と、相場を示すことで答えやすくなります。

期限についても、同様に確認します。「いつまでに完成させたいとお考えですか」「何か特定のイベントや期限がありますか」と尋ねることで、スケジュールの制約を把握できます。

整理して返す技術

ヒアリングが終わったら、相手が話した内容を整理して返します。これが、課題の整理役としての最も重要な仕事です。

整理して返す際には、まず要点をまとめます。「お話を伺った限り、御社の目的は〇〇で、現状は〇〇、課題は〇〇と〇〇、優先順位は〇〇が高いという理解で合っていますか」と確認します。このとき、相手が話した順番ではなく、論理的な順番で整理することがポイントです。

次に、相手が気づいていなかった論点を提示します。「お話を伺って、もう一つ考えるべきポイントがあると感じました。それは〇〇です。この点について、どのようにお考えですか」と投げかけることで、相手は新たな視点を得ます。

また、複数の選択肢を提示することも有効です。「このような状況であれば、〇〇というアプローチと、〇〇というアプローチが考えられます。それぞれにメリットとデメリットがありますが、どちらが御社に合っていそうですか」と尋ねることで、相手は自分で判断する材料を得ます。

整理して返すことで、相手は「この人は自分の話を理解してくれている」「この人と話すと考えがクリアになる」と感じます。この感覚が、信頼につながります。

次のステップを明確にする

初回相談の最後には、次のステップを明確にします。曖昧なまま終わると、相手は「結局、次に何をすればいいのかわからない」と感じ、そのままフェードアウトしてしまいます。

次のステップは、具体的であることが重要です。「今日お伺いした内容をもとに、具体的な提案書を作成します。来週の〇曜日に、再度お時間をいただけますでしょうか」といった形で、日時まで決めることが理想的です。

また、次回までに相手に確認してもらうべき事項がある場合は、それも明確にします。「次回までに、社内で〇〇について確認しておいていただけますか」「予算について、上司の方にも相談しておいていただけると助かります」といった形です。

さらに、次回の相談でどのような内容を扱うのかを伝えます。「次回は、具体的なプランと見積もりをご提示しますので、それをもとに実際に進めるかどうかをご判断いただければと思います」と伝えることで、相手は次回の相談の目的を理解できます。

短時間でも成果が出る相談の進め方

副業やスモールビジネスでは、時間が限られることが多いです。そのため、短時間でも成果が出る相談の進め方を型化することが重要です。

一つの方法は、事前に質問リストを作っておくことです。初回相談の前に、聞くべき質問をリストアップしておき、相談の場ではそれに沿って進めます。これにより、聞き忘れを防ぎ、効率的に情報を引き出せます。

また、時間を区切ることも有効です。「本日は三十分お時間をいただいていますので、最初の二十分でヒアリングをさせていただき、残りの十分で次のステップを確認させていただければと思います」と伝えることで、相手も時間を意識して話してくれます。

さらに、メモを取ることも重要です。相手が話した内容をその場でメモすることで、後で正確に振り返れます。また、メモを取る姿勢は、「この人は真剣に話を聞いてくれている」という印象を与えます。

相談後のフォローアップ

初回相談が終わったら、その日のうちにフォローアップのメールを送ります。これにより、相手は「この人はしっかりしている」と感じます。

フォローアップのメールには、以下の内容を含めます。まず、相談の時間をいただいたことへの感謝です。「本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございました」と伝えます。

次に、相談で確認した内容の要点をまとめます。「本日お伺いした内容を整理しますと、以下の通りです」と箇条書きで示すことで、相手は内容を再確認できます。

そして、次のステップを再度確認します。「次回は〇月〇日に、提案書をお持ちしてご説明させていただきます」と明記することで、相手は安心します。

最後に、質問や追加で確認したいことがあれば、いつでも連絡してほしいと伝えます。「もし何かご質問やご確認事項がありましたら、いつでもご連絡ください」という一文を添えることで、相手は気軽に連絡しやすくなります。

営業が得意な人は話さない

初回相談で失敗する人の多くは、自分が話しすぎてしまいます。自分のサービスを詳しく説明したり、過去の実績を長々と語ったりすることで、相手は「この人は自分の話を聞いてくれない」と感じます。

営業が得意な人ほど、話すよりも聞くことに時間を使います。相手が話す時間が全体の七割、自分が話す時間が三割というバランスが理想的です。そして、自分が話す内容は、相手の話を整理し、新たな視点を提供し、次のステップを示すことに集中します。

初回相談は、自分を売り込む場ではなく、相手の課題を整理し、信頼を築く場です。この認識を持ち、課題の整理役としての役割を果たすことで、受注への道が開けます。相手の話をよく聞き、整理して返し、次のステップを明確にする。このシンプルなプロセスを型化し、繰り返すことで、初回相談は確実に成果を生み出すようになります。

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