第2章:ターゲットと提供価値の設計(誰の何をどう変えるか)

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なぜ「30代女性向け」では誰にも刺さらないのか

副業でSNSを始める人の多くが、ターゲット設定を「30代女性」「会社員男性」「子育て中のママ」といった属性で決めてしまいます。しかしこの設定方法では、投稿が誰の心にも刺さらない結果に終わります。

なぜなら、同じ30代女性でも抱えている悩みや求めている価値はまったく異なるからです。キャリアアップに悩む独身女性と、子育てと仕事の両立に悩む既婚女性では、必要としている情報も商品もサービスも違います。年齢や性別という表面的な属性で区切っても、本当に届けたい人には届かないのです。

副業で限られた時間とリソースを使う以上、「できるだけ多くの人に」というアプローチは非効率です。むしろ「この悩みを抱えている人には確実に」という深い刺さり方を目指すべきです。そのためには属性ではなく、その人が今どんな状態にあって、どんな状態に変わりたいと思っているかで設計する必要があります。

たとえば同じダイエット商品を扱う副業でも、「産後の体型戻しに悩んでいて、子どもを抱っこするのに体力がなくて困っている人」と「健康診断で数値が悪く、医者から運動を勧められたけど何から始めればいいかわからない人」では、響くメッセージも提供すべき情報もまったく違います。前者には育児をしながらできる運動や時短レシピが刺さり、後者には具体的な健康数値の改善例や初心者でも続けやすいプログラムが響きます。

属性で区切ると投稿内容も漠然としたものになります。「女性の皆さんへ」「働くみなさんへ」という呼びかけでは、誰も自分ごとだと思いません。しかし「毎朝子どもの準備に追われて自分の時間がゼロのあなたへ」「会議続きで肩こりと頭痛が慢性化しているあなたへ」という呼びかけなら、該当する人は「これは私のことだ」と強く反応します。

副業のSNS運用で成果を出すには、この「自分ごと化」を徹底的に追求する必要があります。そして自分ごと化を実現する設計手法が、属性ではなく状態の変化、つまりビフォーアフターで考えるアプローチなのです。

悩み・不安から逆算するターゲット設計

ターゲット設計の出発点は、その人が抱えている悩みや不安を具体的に言語化することです。ここでの悩みは、できるだけ具体的であればあるほど良いです。

たとえば「お金の悩み」では抽象的すぎます。「毎月給料日前になると残高が数千円になって不安」「老後資金が心配だけど何から始めればいいかわからない」「副業を始めたいけど初期投資が怖い」というレベルまで具体化します。この具体性が、投稿内容の説得力を生み出します。

悩みを洗い出す際は、自分の経験や周囲の声を丁寧に拾います。副業を始めるきっかけになった自分自身の悩みは何だったか、過去にどんなことで困ったか、友人や家族から相談されたことは何か。こうした実体験ベースの悩みは、同じ状況の人に強く響きます。

また、SNSのコメントやDM、競合アカウントのコメント欄も悩みの宝庫です。「私もこれで悩んでいました」「まさに今困っています」というコメントには、リアルな悩みが詰まっています。これらを記録し、分類することで、どんな悩みを持つ人が多いか、どんな表現で語られているかが見えてきます。

悩みを整理する際は、表面的な悩みと深層の悩みを区別します。たとえば「痩せたい」は表面的な悩みですが、その奥には「昔着ていた服が入らなくて自信を失っている」「健康診断の数値が悪くて将来が不安」「周囲の目が気になって外出が億劫」といった深層の悩みがあります。この深層まで理解することで、より心に刺さる訴求ができます。

悩みと対になるのが理想の状態です。その人は悩みが解消されたらどんな状態になりたいのか、何ができるようになりたいのか、どんな気持ちになりたいのか。これを具体的にイメージします。

「痩せたい」なら、理想の状態は「気に入っている服を自信を持って着られる」「健康診断で正常値になって安心できる」「友人と食事に行くときに服装を気にせず楽しめる」といった具体的なシーンまで描きます。この理想の状態が明確であればあるほど、提供価値の設計がしやすくなります。

悩みと理想の状態をセットで整理することで、ビフォーアフターの全体像が見えてきます。このビフォーアフターこそが、あなたの商品やサービスが提供する価値の本質です。副業のSNSでは、この変化を繰り返し様々な角度から伝えることで、見込み客の共感と信頼を獲得していきます。

どんな価値をどう渡すかの設計

ターゲットの悩みと理想の状態が明確になったら、次に自分が提供できる価値を定義します。ここでいう価値とは、商品やサービスそのものではなく、それによってもたらされる変化や結果のことです。

多くの副業実践者が陥る失敗は、商品の機能や特徴ばかりを語ってしまうことです。「このクリームには○○成分が配合されています」「このプログラムは全10回の構成です」といった情報は、すでに購入を決めている人には必要ですが、まだ検討段階の人には響きません。

価値とは、その商品やサービスを使うことで顧客の人生がどう変わるかです。クリームなら「毎朝鏡を見るのが楽しみになる肌に変わる」、プログラムなら「三ヶ月後には一人で正しいフォームでトレーニングできるようになる」といった変化です。

提供価値を設計する際は、機能的価値と感情的価値の両面を考えます。機能的価値は客観的に測れる変化です。「体重が五キロ減る」「作業時間が半分になる」「月の出費が一万円減る」といった具体的な数字で表せる価値です。

感情的価値は主観的な変化です。「自信が持てるようになる」「不安が減って心が軽くなる」「家族との時間が増えて幸せを感じる」といった気持ちの変化です。人は機能的価値で納得し、感情的価値で決断します。両方を明確に提示することで、購買意欲を高められます。

また、価値の段階も意識します。即効性のある価値と長期的な価値では訴求方法が異なります。即効性のある価値は「今すぐ」という緊急性を持たせやすく、長期的な価値は「将来への投資」という視点で伝えます。

たとえば整理収納サービスなら、即効性の価値は「週末の二時間で部屋が見違えるほど片付く」、長期的な価値は「探し物の時間がなくなり年間百時間を取り戻せる」です。両方を伝えることで、短期と長期の両面から価値を感じてもらえます。

価値を設計する際のもう一つの重要な視点が、他との違いです。同じような商品やサービスを提供する人は数多くいます。その中で選ばれるには、独自の価値提案が必要です。

独自性は必ずしも商品そのものにある必要はありません。提供方法、サポート体制、コミュニケーションスタイル、あなた自身の経験や人柄も独自性になります。「元々片付けられなかった私だからこそわかる挫折しないコツを教えます」「忙しい会社員だった経験から、限られた時間で最大効果を出す方法を設計しています」といった独自の視点が、他との差別化要因になります。

顧客の状態に応じた情報設計の重要性

ターゲットと提供価値が定まったら、次に考えるべきは顧客の状態に応じた情報設計です。同じターゲットでも、その人が今どの段階にいるかによって必要な情報は大きく異なります。

顧客の状態は大きく三つに分類できます。

一つ目は初心者段階です。

この段階の人は、問題の存在には気づいているかもしれませんが、解決方法や選択肢をまだ知りません。または知識や経験が浅く、基本的な情報から必要としています。

初心者向けには、基礎知識や用語の説明、よくある誤解の解消、簡単にできる最初の一歩などを提供します。たとえば投資の副業なら「投資信託とは何か」「NISAの仕組みをわかりやすく」「初心者が陥りがちな失敗」といった内容です。専門用語を使わず、比喩や具体例を多用して理解しやすく伝えます。

二つ目は比較検討段階です。

この段階の人は、解決方法の選択肢を知っていて、どれが自分に合っているか検討しています。複数のサービスや商品を見比べ、メリットとデメリットを天秤にかけています。

比較検討中の人には、選び方の基準、それぞれの選択肢の特徴、自分に合った選択肢の見つけ方などを提供します。ここで重要なのは、一方的に自分の商品を推すのではなく、客観的な比較視点を提示することです。「こういう人にはAが向いていて、こういう人にはBが向いている」という情報は、信頼を高めます。その上で「うちはこういう特徴があるので、こんな人に選ばれています」と伝えることで、自然な差別化ができます。

三つ目は購入直前段階です。

この段階の人は、ほぼ購入を決めていますが、最後の一押しや具体的な情報を求めています。価格、購入方法、保証内容、実際の利用者の声などが知りたい状態です。

購入直前の人には、詳細な商品情報、利用開始までの流れ、よくある質問への回答、実際の成果事例などを提供します。また、今購入する理由、つまり限定性や緊急性を示すことも効果的です。「今月限定の特典」「残り枠が少ない」といった情報は、決断を後押しします。

副業のSNS運用では、この三つの段階すべてに向けた投稿をバランスよく配分することが重要です。初心者向けばかりだと既存顧客や検討中の人が離れ、購入直前向けばかりだと新規の人がついてこれません。

具体的な配分の目安は、初心者向けが五割、比較検討向けが三割、購入直前向けが二割程度です。ただしこれは目安であり、自分のフォロワー構成やビジネスの段階によって調整します。立ち上げ期は初心者向けを多めに、既存顧客が増えてきたら比較検討や購入直前向けを増やすといった具合です。

投稿ネタが枯れない仕組みの作り方

顧客の状態に応じた情報設計ができると、投稿ネタが枯れにくくなります。なぜなら、一つのテーマでも段階別に何通りもの切り口で語れるからです。

たとえば「時短料理」というテーマ一つをとっても、初心者向けには「時短料理の基本三原則」「まず揃えるべき調理器具」「冷凍保存の基本ルール」といった投稿ができます。比較検討段階には「時短重視vsヘルシー重視の選び方」「作り置きと当日調理、あなたに合うのはどっち」「時短家電は本当に必要か」といった投稿ができます。購入直前段階には「私の時短料理プログラムの全容」「受講生のビフォーアフター」「よくある質問トップ5」といった投稾ができます。

このように一つのテーマを深く掘り下げることで、同じ内容を繰り返さずに新鮮な角度から発信し続けられます。副業で時間が限られている人にとって、この効率性は非常に重要です。

投稿ネタを管理するには、コンテンツマップを作成することをお勧めします。横軸に顧客の状態(初心者、比較検討、購入直前)、縦軸にテーマ(時短料理なら「基礎知識」「具体的レシピ」「ツール活用」「マインドセット」など)を置き、マス目を埋めていきます。

この表を見れば、どの領域の投稿が不足しているか、どこに偏っているかが一目瞭然です。バランスを見ながら投稿を計画することで、特定の層だけに偏らない発信ができます。

また、フォロワーからの質問やコメントも重要なネタ源です。特に「これってどういうことですか?」「○○と△△の違いがわかりません」といった質問は、同じ疑問を持つ人が他にもいる証拠です。これらを投稿ネタとしてストックしておきます。

季節やトレンドも活用できます。年末には「年始から始める○○」、新年度には「新生活に取り入れたい○○」、夏前には「夏までに間に合う○○」といったタイミングを意識した投稿は、時期的な関心を捉えやすくなります。

ネタ帳を作る習慣も効果的です。日常生活で気づいたこと、フォロワーの反応が良かったテーマ、競合アカウントで人気のあった切り口などをメモしておきます。スマホのメモアプリやノートに思いついた順に書き溜めておけば、投稿を作る際にネタに困ることがなくなります。

発信の一貫性が生む信頼と専門性

ターゲットと提供価値が明確になると、発信内容に一貫性が生まれます。この一貫性こそが、副業アカウントを単なる趣味の発信と差別化し、専門家として認識してもらう鍵となります。

一貫性とは、すべての投稿が同じテーマを扱うということではありません。同じターゲットの同じ課題に対して、様々な角度からアプローチすることです。ある日は基礎知識、ある日は実践例、ある日は失敗談と、形式は変わっても、根底に流れる「誰のどんな問題を解決するか」が一貫しています。

一貫性のある発信を続けると、フォロワーの中であなたのポジションが明確になります。「この人は○○の専門家だ」「○○について知りたいときはこの人の投稿を見ればいい」という認識が形成されます。この認識が信頼につながり、購入や問い合わせという行動を引き出します。

逆に一貫性のない発信は、フォロワーを混乱させます。今日は料理の投稿、明日は旅行の投稿、次の日はビジネスの投稿では、結局何の人なのかわかりません。フォロワーはフォローする理由が見つけられず、投稿を見る優先度も下がっていきます。

副業でSNS運用する場合、私生活と事業の線引きも悩むポイントです。完全にビジネスの投稿だけだと堅苦しく感じられ、かといって私生活を出しすぎると専門性が薄れます。

ここでのバランスは、私生活の投稿も「ターゲットに関連する文脈」で発信することです。たとえば時短料理を教える副業なら、自分の食卓の写真を投稿する際も「今日は帰宅が遅かったので冷凍ストックで十五分で完成」という文脈を添えます。単なる食事写真ではなく、時短というテーマに沿った投稿になります。

こうすることで、親近感と専門性の両方を保てます。「この人も忙しい中で工夫している」という共感と、「実践的なノウハウを持っている」という信頼が同時に得られるのです。

発信の一貫性を保つためのもう一つの方法は、定型フォーマットを作ることです。毎週月曜日は基礎知識、水曜日は実践例、金曜日は質問回答、というように曜日ごとにテーマを決めます。またはカルーセル投稿は比較検討向け、リールは初心者向け、というように形式とターゲット段階を紐づけます。

このルールがあることで、投稿作成の判断が早くなり、フォロワーも「月曜日は勉強になる投稿が来る」といった期待を持つようになります。期待は習慣を生み、習慣は長期的なエンゲージメントにつながります。

ペルソナを設定しすぎない柔軟性

ターゲット設計の話をすると、詳細なペルソナ設定を推奨する情報をよく見かけます。年齢、職業、家族構成、趣味、年収、住んでいる場所、好きなブランドまで細かく設定するというものです。

確かに大企業のマーケティングでは有効な手法ですが、副業やスモールビジネスでは、ペルソナを細かく設定しすぎると逆に視野が狭くなるリスクがあります。想定外の層からの反応や問い合わせを見逃したり、柔軟な軌道修正ができなくなったりします。

副業の場合、最初は仮説でターゲットを設定し、実際の反応を見ながら調整していくアプローチの方が現実的です。「こういう悩みを持つ人」という設定で始めて、実際に反応してくれる層の特徴を観察し、そこから学んでいきます。

たとえば「産後ダイエットに悩む三十代女性」をターゲットに想定していたのに、実際には「更年期で体型が変わり始めた四十代女性」からの反応が多かった、というケースは珍しくありません。この場合、想定を固めすぎていると「ターゲットがずれている」と焦りますが、柔軟に考えれば「より大きな市場を発見した」と捉えられます。

重要なのは、属性より悩みや求める変化でターゲットを定義しておくことです。そうすれば年齢や状況が想定と違っても、同じ悩みを持つ人であれば対応できます。「体型の変化に悩み、自信を取り戻したい人」という定義なら、三十代でも四十代でも、産後でも更年期でも、提供価値は同じです。

ただし、あまりに広すぎる設定も問題です。「すべての女性」「誰でも」というターゲット設定では、結局誰にも刺さらない発信になります。最低限「こういう悩みを持ち、こういう変化を求める人」というレベルの具体性は必要です。

ターゲット設計は一度決めたら固定するものではなく、運用しながら磨き上げていくものです。月に一度、あるいは四半期に一度、実際の反応データを見ながら「想定したターゲットと実際に反応している層は一致しているか」「新たに見えてきた層はないか」を確認します。必要に応じて設定を調整することで、より現実に即した効果的な発信ができるようになります。

ターゲット設計が副業の方向性を決める

ターゲットと提供価値の設計は、単にSNS投稿の内容を決めるだけではありません。副業全体の方向性、商品開発、価格設定、提供方法、すべてに影響する根幹の設計です。

たとえば「忙しいビジネスパーソンの短時間で成果を出したい」というニーズを捉えたなら、提供するサービスも短時間で完結する形式にすべきです。三ヶ月の長期プログラムより、週一回三十分のセッションや、自分のペースで進められる動画教材の方が適しています。

価格設定もターゲットによって変わります。「質の高いものにお金を払うことに抵抗がない層」をターゲットにするなら、適正な高価格設定が信頼につながります。逆に「コスパを重視する層」なら、価格は抑えつつボリュームで訴求する戦略が効果的です。

コミュニケーションの方法も、ターゲットの特性に合わせます。じっくり考えて決断するタイプが多い層なら、詳細な説明資料やメール相談を充実させます。直感的に決めるタイプが多い層なら、ビジュアル重視の投稿やライブ配信での直接対話が効果的です。

このように、ターゲットと提供価値の設計は、副業のあらゆる側面に影響します。だからこそ、運用開始前にしっかり時間をかけて設計する価値があるのです。

また、ターゲット設計は差別化戦略でもあります。同じ商品やサービスを扱っていても、誰に向けて、どんな価値を提供するかの設計が違えば、まったく異なるポジショニングが可能です。競合が多い分野でも、ターゲットを絞り込み、提供価値を明確にすることで、独自の立ち位置を築けます。

副業でSNS運用を成功させるには、「誰の何をどう変えるか」を徹底的に考え抜くことです。属性ではなくビフォーアフターで設計し、顧客の状態に応じた情報を提供し、一貫性のある発信を続ける。この土台があれば、投稿ネタに困ることもなく、フォロワーの信頼を着実に積み上げていけます。

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